ヒップホップはコワモテのための音楽じゃない
日本にヒップホップは根付かない
ヒップホップが日本に根付こうとしていた頃に、音楽を語ることを商売にしている人がそう語っていたのを今でも覚えています。
当時、ヒップホップやラップミュージックをこぞって聴いていた自分にとってはひどく悔しい思いがあったのですが、アメリカと日本の文化の違いを考えると、同意せざるを得ない部分も少なからずあったかと思います。
ただ、日本はアメリカじゃない。
日本独自のヒップホップを作れるはずだと思うんです。
まず言っておくと、今回の記事は日本のヒップホップのコアな部分には触れません。
あくまで日本のヒップホップをあまり知らない人をターゲットに書いていくつもりです。
さて、日本のヒップホップって何?っていう人でも知ってる曲というのがいくつかあると思います。
DA.YO.NE - EAST END×YURI - YouTube
小沢健二ft.スチャダラパー 今夜はブギーバック - YouTube
EAST END×YURI「DA.YO.NE」
スチャダラパー featuring 小沢健二「今夜はブギー・バック」
ともに1994年発売のこの曲は、ヒップホップ、ラップミュージックとして初めてお茶の間に根付いた曲と言ってもいいと思います。(後にEAST END×YURIは「DA.YO.NE」で第46回NHK紅白歌合戦へ出場)
その後、ダンスグループを中心にラップは使われることになりますが、ヒップホップ自体のブームは静かに去っていきます。
そして2000年に差し掛かる頃、意外なところから再びブームはやってきます。
Dragon Ash 1997~2001 - Deep Impact (PV 90sec) - YouTube
Dragon Ashが発売した「Deep Impact featuring ラッパ我リヤ」です。
それまでパンクロックバンドとして活動していたDragon Ashが、ヒップホップ界でコアな人気を得ていたラッパ我リヤを客演として迎え入れたこの楽曲はロックシーンを中心に評価されることになりました。
そしてもう一曲重要な出来事がありました。
嵐のデビューです。
「え?」と思う方もいるかもしれませんが、彼らのデビュー曲「A・RA・SHI」は大胆にラップパートを取り入れ、お茶の間にラップミュージックを浸透させた功労者と言っても間違いないんですよね。
嵐の人気で子供から大人までラップの認知を高め、Dragon Ashの活躍でヒップホップ畑以外のリスナーがラップを取り入れた。
この年を経て、日本のヒップホップはアンダーグラウンドシーンだけのものではなく、ひとつのジャンルとして確立されたと思います。
そうして2013年現在。
CDが売れない時代と言われてる昨今、他のジャンルと違わずヒップホップシーンも元気が無いように見えます。
2000年以降活躍したヒップホップユニットも、現在も精力的に活動してるのは一握りのユニットだけです。
ただ一方で、ラップミュージックはどこもかしこも取り入れているくらいの認知度に成長しましたし、今年解散こそしましたがFUNKY MONKEY BABYSは未曾有の活躍を見せました。
そして現在のアイドルブームにもラップミュージックを取り入れているグループが多く存在します。
ライムベリー - SUPERMCZTOKYO(PV) - YouTube
lyrical school / PARADE (MV) - YouTube
5 the Power - ももいろクローバーZ - YouTube
以前にもHALCALIのような女の子ラップユニットはいたんですが、どうしてもシーン全体の絶対数が少ないために大きな盛り上がりを見せなかった様に思います。
日本のヒップホップを盛り上げたい人間からいうと、
「今アイドルのラップを盛り上げないでどうする」
ってことですよ。
タイトルにも書きましたけど、ヒップホップはコワモテのお兄ちゃんだけの音楽じゃないんですよ。(アメリカならそれもいいかもしれないが)
そもそも先述した日本でのヒップホップのブームはすべて他ジャンルとのコラボレーションで起こっています。
EAST ENDも、スチャダラパーも、ラッパ我リヤも一流のラッパーです。
だけど、市井由理や、小沢健二、Dragon Ashの力があったからこそ爆発が起こったんです。
先ほど紹介したライムベリーはヒップホップトラックメイカー、DJ DECKSTREAMの新譜に参加してるんですけど、このアルバムがほんとに傑作でした。
ライムベリーのようなアイドルから、DA.YO.NEにも参加しているMummy-D、CHEMISTRYの川畑要など、ジャンルを超越したメンツを揃えた名盤です。
ヒップホップ創世記を支えたラッパーがアイドルと肩を並べてひとりのDJの作品に参加してるんですよ。爽快じゃないですか。
ももいろクローバーZの「5 THE POWER」にしたって、制作してるのはいとうせいこう、MUROとヒップホップ界の重鎮です。
そういった人達が力を貸してこそシーンは動くし、コアな人間だけが盛りあがっているだけのシーンは沈みますよ。
ブームだって何度も起これば文化として根付きます。
今動いて損はないですよ。特に本気でやっている人達は。
EAST END×YURIみたいなユニットこそ今求められているのではないか。
— 大山卓也 (@takuya) 2013, 11月 11
※最後に、別の方向からシーンを盛り上げているBAZOOKAの高校生ラップ選手権も紹介しておきます。未来は明るい。はず。
BAZOOKA 第4回高校生ラップ選手権 赤坂ブリッツ - YouTube